多重債務問題
借金問題と過払い
平成の時代になって景気の低迷が続き、個人の消費者金融やクレジット会社からの借入れが増加していきました。平成10年頃から、個人の借金問題が深刻となっていき、多重債務問題と呼ばれるようになりました。そのような状況のなか、グレーゾーン金利が注目され、過払い金の返金が認められることになりました。
多重債務問題
個人が複数の金融業者から借入れをしてしまい、返済をすることが困難となって生活が破綻し、破産や最悪の場合には自殺に至ることもあります。これを多重債務問題といい、社会問題となりました。
最初は軽い気持ちで、消費者金融やクレジット会社から借入れをします。もともと貯金ができなかったから借入れをするのですから、その返済の負担がかかると、当然、その後の生活は苦しくなってお金が足らなくなり、さらに借入れをしてしまいます。1社からは借入れの限度額が定められているため、すると、別の消費者金融やクレジット会社から借入れをしてしまいます。これが繰り返され、4社、5社から到底完済することはできない借入れをしてしまい、返しては借りることを繰り返し、債務総額は減らず、利息のみを何年も支払い続ける状態が、多重債務状態です。
以前は、これをクレジット・サラ金問題(クレサラ問題)といっていましたが、平成18年ころ、貸金業法改正が議論されるようになってクレサラ問題が顕在化し、政府がその対策に乗り出すようになって、多重債務問題対策プログラムが策定され、一般的に多重債務問題と呼ばれるようになりました。
グレーゾーン金利
グレーゾーン金利とは、利息制限法で定められた上限金利18%と旧貸金業規制法で定められた上限金利29.2%の間の金利のことをいいます。
古くからある利息制限法では、18%を超える利息は無効とされていました。
これに対して、旧貸金業規制法では、ある一定の条件を満たした場合には、29.2%までの金利を受領できる、とされていました。
クレサラ問題が深刻化し、借金により生活が破綻する人が急増したこと、この“一定の条件を満たした場合に”というところに注目し、条件を満たしていないので18%以上の利息は無効であるとして裁判を起こすようになりました。
その結果は、条件を満たしていないと判断される判決が多く、いつ頃から定着したかは定かではありませんが、少なくとも司法書士が簡裁代理権を獲得し、本格的に債務整理問題を扱うようになった頃には、利息制限法を超える金利は原則認められないことが多くなっていました。
原則認められず、裁判をすれば勝訴となることが圧倒的ではありましたが、全く認められないというわけではなく、敗訴することもあったので、18%以上29.2%以下の金利がグレーゾーンと呼ばれるようになりました。
過払い金
29.2%の利息受領が認められず、18%以上の利息が無効とされると、29.2%として計算されて支払った利息金額のうち、18%として計算される利息金額を超える部分は無効となり、この超過金額は、払い過ぎということで、過払いとなります。この払い過ぎ分は、元金に充当されます。
簡単に原理を説明します。解りやすくするため、計算結果は概略で示します。
50万円の借り入れがあり、29.2%の利息を計算すると15,000円となり、18%であるとして計算すると、10,000円となるとします。
契約では、29.2%の利息を支払うとしていたので、20,000円を返済すると、15,000円は利息となり、5,000円が元金の返済分となって、返済後の元金は495,000円となります。ところが、18%で計算した10,000円以上の利息は無効であるので、これにより計算しなおすと、元金返済分は10,000円となり、返済後の元金は490,000円となります。
借入れ・返済が繰り返され、29.2%の利息として計算されると、いまだ50万円の借入残高があるとなっていても、18%の利息として計算し直すと、無効な利息支払い分は次々の元金に充当され、借入残高はどんどん減少し、50万円あると思っていた借入残高は、あと10万円しかなかった、ということになります。さらに進むと、元金は0円となり、いずれはマイナスという計算結果となります。このマイナスとなった元金は、支払い超過分として、返還してもらうことができます。
ここの支払い超過分も過払いといいますが、一般には、この支払いすぎてマイナスとなった分を返金してもらうことを過払い金返還請求といい、マイナスになったことを過払いが生じたといいっています。
<多重債務問題> 最終更新 2012-07-11 (水) 21:04:16 by 司法書士下原明(大和市)