株式会社解説
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株式会社の基本事項の解説
商号
会社の名称です。名称の前か後に必ず“株式会社”を付ける必要があります。
名称には、日本文字の他、英数字、一部の記号(「&」「’」「,」「-」「.」「・」)を利用することができます。
従来、類似商号の会社がある場合には登記できないとされていましたが、新会社法では類似商号の規制が撤廃され、同一名称・同一住所でなければ登記をすることはできます。
登記はできますが、無制限に商号を付けて良いというわけではなく、不当競争防止法などにより事後に争われる恐れがあります。
目的
どういう会社であるのかを表す、会社の事業の目的です。
従来、目的には、営利性、適法性、明確性、具体性がなければならないとされていて、目的として設定できる内容が制限されていました。
新会社法では、目的として設定できる内容が大幅に緩和され、例えば、「営業」「物品販売」などでのよいことになりました。しかしながら、登記できる目的は事実上ほとんど制限されなくなりましたが、会社の目的はその会社の内容を表すものであるので、どのような会社であるかわかるような目的とするのが望ましいと考えます。
なお、官公署の許認可にかかる業務を行なう場合は、特定の目的が登記されていることが条件となる場合がありますので、注意が必要です。例えば、損害保険会社の代理店となって業務を行なうためには、「損害保険の代理業務」等の目的が登記されていることが必要となります。
本店
会社の住所です。会社が事業を行なう拠点です。
会社の事務所等の住所となります。
類似商号と商号・目的・本店の関係
従来、同一市内に同一の目的をもつ類似した商号の会社が存在している場合、その商号の会社を設立することはできないとされていました。
このため、会社を設立する、商号を変更する、といった場合には、その市内に同一の目的をもった類似商号の会社が存在していないかを厳密に確認する必要がありました。
新会社法では、この制限が廃止され、類似する商号があっても、その商号の会社を設立できることになりました。
この類似商号の問題から、会社が登記できる目的が厳しく制限されていました。同様の内容の事業を行なうのに、目的の文言を変えることで違う内容の事業を行なっているような誤解が生じることのないようにするための措置でした。
新会社法では、類似商号の規制がなくなったため、目的には、営利性があれば、ほぼどのようなものでもよいことになりました(正確には、営利性、適法性、明確性があればよく、具体性は必要なくなったとされています)。
機関設計
会社を構成する、株主総会、取締役、監査役、代表取締役、取締役会などを会社の機関といいます。
従来は、株式会社では、取締役が3人、監査役が1人が必要とされていました。
しかしながら、実態として、社長1名の個人会社で、他の取締役や監査役は名前だけを借りているという会社が多数存在していました。
新会社法では、会社の機関を定款で定め、柔軟な機関構成の会社を設立できるようになりました。
これにより、定款で規定することで、株主・取締役が1名のみの1人会社から、1部上場の大会社までの会社の機関を柔軟に構成することができます。
会社の機関といわれるものには、次のものがあります。
- 株主総会*
- 取締役*
- 取締役会
- 監査役
- 監査役会
- 会計監査人
- 会計参与
- 委員会(指名委員会、監査委員会、報酬委員会)
*は、全ての会社に置かれます。
その他は、定款で置くか置かないかを決めることができます。
通常会社を設立するときに検討する機関設計は、次の点でしょう。
- 取締役会を置くか(取締役会を置く場合は、取締役が最低3名必要となります)
- 監査役を置くか(監査役を置かないことも可能)
その他の各機関を設置するかどうかは、会社の発展段階に応じて検討します。
非公開会社(株式の譲渡制限)
会社法で規定している非公開会社とは、株式の譲渡制限が定款で規定されている会社です。一般で認識されている、上場会社と非上場会社とは異なります。
非公開会社は、従来の有限会社を意識したものとなっていますが、必ずしも非公開会社=有限会社ではありません。
非公開会社であれば、取締役は1人でよく、定款で規定することにより役員の任期を10年まで伸張できるなどの違いがあります。
従来の株式会社でも、小規模な会社ではほとんど株式の譲渡制限が設定されており、新会社法施行後も非公開会社として扱われます。
株式の譲渡制限をする主旨は、本来株式は譲渡自由で、誰でも出資をすることで経営に参加できるのが原則ですが、実際には個人経営の会社で、他人が経営に参加することが望ましくないと考えるときに、意図せずに他人が株主となることを防止することにあります。
株主総会
株主総会は、株式会社で最も基本となる機関であり、会社の基本事項を決定し、取締役の選任をします。会社の具体的経営は、取締役会で決定し、取締役会が行ないます。
新会社法では、様々な形態の機関設計が可能となり、取締役会がない会社も存在し、この場合、株主総会は代表取締役の選任の他、経営に関する全てのことを決定することができます。
取締役会が設置されている会社では、代表取締役の選任の他、会社の具体的経営事項は取締役会が決定します。
取締役と取締役会
取締役は株主総会で選任され、会社の具体的経営に当たります。取締役会設置会社では、3名以上の取締役が取締役会を構成し、会社の具体的経営に関する事項を決定します。
株主は会社の所有者ですが、会社の経営は取締役が行ないます。
監査役
監査役は、会社の経営を監視する役を担い、会社の経営に直接参加はしません。
監査役の独立性を確保し、もって監査役の監視機能を実効たらしめるため、監査役はその会社や子会社の取締役・使用人を兼任することはできません。
従来、小会社の監査役は会計監査機能のみを担い、中会社・大会社の監査役は業務監査も行なうとされていましたが、新会社法では、機関設計の内容に従い、定款で監査役の業務の範囲を決定します。
資本金
株式会社の基本は、株主が会社を運営する資金(資本金)を出資し、その資金を利用して取締役が経営を行ないます。資本金は株式会社の基本的要素の1つです。
従来、株式会社を設立するには、資本金を1千万円用意しないと設立はできませんでした。
新会社法では、資本金の制限は撤廃され、1円の資本金でも会社を設立することができることになりました。
では、実際に株式会社を設立するのに、資本金はいくらあったら良いのでしょうか。
法的には資本金の制限はないといっても、実際に会社を運営する資金がなければ、会社は成り立ちません。資本金は1円で、実際の運営資金は借入れでまかなうという方法も可能ではありますが、本格的に会社を経営していくのに、資本金が1円の会社というのは、信用上どのようにみられるでしょうか。
新会社法では、資本金がいくらというのは、実質的に余り意味がないとの考えから、最低資本金の規制を撤廃したのですが、そうはいっても、資本金1万円の会社と、資本金1000万円の会社では、資本金1000万円の会社の方が信用できるのではないかと考えるのが普通でしょう。
現実的には、実際に自身で会社を運用していくのに最低限必要と思われる資金を、資本金として設定するのが望ましいと考えます。
なお、事業を行なうのに許認可を受けて免許が必要な事業を行なう場合には、資本金が最低いくら以上なければならないという規定がある場合がありますので、確認が必要です。
株式
株式は、1つの単位に資本金を細分化し、出資者に株式を引受けてもらう(すなわち、株を購入してもらう)とこにより、広く多くの出資者から資本を提供してもらうための手段となるものです。
1株5万円の株式(現在は、1株の価格はいくらとしても良いことになっていますが、従来は、1株は原則5万円とされていました)を200株発行し、これをすべて引受けてもらえば、資本金は1000万円となります。
株式を上場している企業では、株式の単位は重要性を持ちますが、全ての出資を個人とその親族で行ない、株式の譲渡制限を設けている非公開会社である個人企業では、1株の単位がどうであるかなどはあまり重要な意味はありません。
増資をする場合には、株式を発行し、それを引受けて株式を購入することで、資金を提供することで行なわれます。
株式には、このほか種類株式などの制度があります。
会社が公告をする方法
株式会社は、毎年の決算を公告することが義務づけられています。公告とは、広く一般に告知するという意味で、新聞などに掲載して発表することになります。
この他、会社が合併をする、資本金を減少する、解散をするときなどに、公告をする必要があります。
上場会社などでは、一般の日刊新聞に公告をする定めとなっています(最近では電子公告を利用することが多くなっています)が、中小の会社では、官報に公告をするとしていることが多くなっています。これは、官報に公告するのが、最も安上がりであることによります。
電子公告の方法による場合は、メリット・デメリットがあるため、電子公告を選択するかしないかは慎重に検討をすることを要します。
会社法の規定では、株式会社は毎年決算公告をしなければならず、決算公告をしなかった場合には過料の制裁を受けると規定されていますが、現実には中小の会社で決算公告をしているところはほとんどないのが実情です。
<株式会社解説> 最終更新 2012-06-13 (水) 22:02:22 by 司法書士下原明(大和市)