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破産申立

自己破産

 収入が少なく、どうしても返済が困難な場合には、破産申立をし、返済を免除してもらいます。

 破産をすると、人生の落伍者となり、なんらかのペナルティーが課せられ、その後は破産者として、一生(一生ではないとしても長期間)様々な制約を受けながら生活をしていかなければならないと考えている人が多数います。
 確かに、一般の方々は、破産をすることは、人生の落伍者になる、というイメージを持っており、ある意味では、大きな失敗をしたことは確かです。
 これにより、借金の返済が困難、不可能な状態になっていても、なんとか破産をしないですむようにと、どうにもならない状態を何年も続け、無駄な人生を送っていく、破産をするより自殺を選ぶという不幸な結果も起こります。
 しかしながら、破産とは、そのような大きな失敗をした人にペナルティーを与える制度ではなく、失敗した人を救済し、人生のやり直しの機会を与える制度なのです。このことを誤解しないでください。

 どうにもならない借金の問題を、破産することで解決し、新たに人生をやり直して下さい。

破産とは

 「破産」という言葉には、強烈な負のイメージがあります。
 確かに、破産をするのは大変不幸なことであり、大きな混乱に巻き込まれることになる場合もありますが、破産法の主旨は、借金を返せなくなった人に人生の落伍者として罰則を与えようとするものではなく、様々な事情により、返済することが不可能な借金を背負うことになってしまった人を救うことにあります。
 確かに、破産をするような状況になってしまうのは不幸なことですし、結果的に借りたお金を返さないということになるわけですから、他人に迷惑をかけるわけで、そのような状況にならないにこしたことはありません。
 でも、誰もが望んでこのような状況になる訳ではなく、様々な要因によって、意図せずそのような状況に陥ってしまうのです。もちろん、本人にその責任の一端がないとはいいませんが、過去の失敗により、その後、一生借金返済を続けるような生活を続けるようなことはあってはなりません。
 そのような状態になってしまった人を救うための法律が破産法なのであり、結果としてそうなってしまった場合に、破産法により、救済をしてもらうことを躊躇することはないと考えています。

 いい加減な気持ちで借金をし、その反省もせず、破産をすれば借金を免除されるんだからいい、という意味ではありません。一般の人は破産者をそのように捉えがちですが、少なくとも私が破産申立のお手伝いをした人は、どちらかといえば人がよく、でももう少ししっかりしろよ、といいたくなるような人たちです。

破産申立手続

 破産の申立をするには、破産の申立に至った事情と、現在の状況を裁判所に報告をし、その事情を裁判所が審査をし、問題がないとされると破産開始決定・免責という手続が進められます。
 破産申立時には、状況を確認するための、各種資料を添付資料として提出します。どのような資料を提出するかは、申立てをする人の状況によっても変わります。債務整理の手続を進めるのに、破産をせざるを得ないとなった時点で、具体的必要書類の説明をさせていただいていますので、それに従って、資料を集めていただき、報告いただいた状況によって破産申立書を作成し、裁判所へ提出します。

免責不許可事由

 破産には、免責不許可事由が規定されています。多くは、破産申立をするにあたり、なんとか自分が得をしようとする行為で、本当に困って破産せざるをえないような場合には関係ありませんが、浪費・ギャンブルにより借金をしてしまった場合が問題となります。
 しかしながら、破産法第252条第2項では、免責不許可事由に当たる場合でも、裁判所が認めるときには免責することができるという、裁量免責の規定があり、現在の運用では、よほど悪質なことがなければ、裁量免責として免責をしてもらうことができます。
 このように免責をしてもらえる背景は、確かに借金をして浪費やギャンブルをするのがいいことではありませんが、貸金業者側も、少しでも貸付を増やしたく、それを助長するような貸付をしていたことによります。なお、現在は貸金業法が改正され、過剰な貸付ができなくなったため、この裁量免責の運用も変わっていくと思われます。

 実際には、従来のように収入の少ない人がギャンブルをして簡単に200万円以上の借金をするようなことはできないことになっているので、浪費・ギャンブルで免責不許可事由に当たる人が破産申立にいたる状況は起こらないはずです。

 破産法第252条で規定される免責不許可事由は次のものです。

  1. 不当な破産財団価値減少行為
  2. 不当な債務負担行為
  3. 不当な偏頗行為
  4. 浪費または賭博その他の射幸行為
  5. 詐術による信用取引
  6. 帳簿隠匿等の行為
  7. 虚偽の債権者名簿提出行為
  8. 調査協力義務違反行為
  9. 管財業務妨害行為
  10. 7年以内の免責取得など
  11. 破産法上の義務違反行為

破産による不利益

 破産をした場合に、なんのペナルティーもなく、借金の免除のみをしてもらえるなどありあないのではないか、と考えられることが多いようです。実際にはどのような不利益があるのでしょうか。

  • 特定の職業に就けない
     いくつかの職業は、破産者はなれないと規定されています。一般の人が係わる可能性がある代表的なものは、生命保険の外交員と警備員でしょうか。
     この職業に現に就いていて、辞めるわけにはいかない状況の人にとっては、これは大問題となります。仕事を辞めて借金を免除してもらうか、仕事を続けて借金の返済をするかの選択になってしまいます。
     しかしながら、申立てをする時点でこれらの職業に就いていない人にとっては、実質的問題にはなりません。破産者であるというのは、破産が開始されてから、免責を受けるまでの間のことであり、免責を受けることで復権となり、破産者であることから解放され、その後にこれらの職業に就くことは何ら制限を受けません。
     それ以外の普通の会社員の方は、破産をしてもなんの影響もありません。
  • 以降7年間は、破産申立てをしても免責されない
     もう一度破産をすることを予定して破産申立をする人はいないわけで、破産申立をすべきかどうかを選択する場合に考慮することではありません。
  • お金を借りることができなくなる
     法律で破産者にはお金を貸してはいけないという規定があるわけではありませんが、破産をした事実が、信用情報に記録されてしまうことにより、事実上お金を借りることはできなくなります。これに伴って、クレジットカードを作ることも事実上できなくなります。
     このことによって、破産をしたくないといわれる方がたまにいらっしゃいますが、本末転倒です。
     もともと、借金を返済することが困難であるから、破産申立をせざるをえないかどうかを検討しているのであり、近い将来にお金を借りられるかどうかを心配するのは、不合理なのです。
     借金を返済できないのに、破産をしないで追加の借金ができるようにしておいても、問題はなにも解決しません。
     破産をした場合、そのことにより、その後一生借金をできないわけではありません。生活を立て直した後には、借入れをすることは可能となります。

 信用情報機関には、破産申立をしたという事実が7年間記録されるとされています。すなわち7年間は再び借入れをすることは事実上できませんが、それを経過したあとであれば、普通の人と同じように借入れをすることは可能になります。

管財事件と同時廃止事件

 昨今の自己破産申立の9割以上は、同時廃止事件といわれています。

 同時廃止事件とは、多額の借金を負ってしまったが、財産といえるものはほとんどなにもないという場合に適用される手続です。貸家住まいで、財産いえるものは全くない場合で、現在の破産申立のほとんどがこれに当てはまります。
 財産といえるももとは、横浜地方裁判所の運用では、原則20万円以上の価値があるものをいい、自宅にあるテレビなどは対象にはなりません。通常相談を受ける破産申立で財産として問題となるのは、不動産、生命保険、自動車、退職金、および、過払い金もその対象となります。

 多少の財産はあるけれども、多額の借金をしてしまってその返済ができないような場合は、管財事件となります。例えば、自宅を所有していて、売却すれば1000万円にはなるけれども、借金を5000万円してしまったような場合は、管財事件となります。この場合は、破産管財人が選任され、先の例では、破産管財人が自宅を売却して現金1000万円に替え、5000万円の債権者に1000万円を配当し、残りの4000万円を免責してもらうという手続になります。
 この他、財産がない場合でも、免責不許可事由があって、裁判所が必要と認める場合には、管財事件として破産管財人を選任し、
破産管財人に状況の調査をさせるということがあります。不正なことをしていなければ、調査をされても問題はないわけですが、破産管財人にかかる費用は本人負担となり、横浜地裁では30万円の予納金を別に準備しなければならないことが問題となります。


<自己破産> 最終更新 2012-07-11 (水) 21:05:59 by 司法書士下原明(大和市)

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