過払金
過払い請求
「過払い」、「過払金返還」、電車の車内広告、ラジオ・テレビコマーシャルなどで過払いが宣伝され、ネットでも過払い、過払金、過払金請求などで検索すると、膨大な情報が検索されます。これにより、過払いという言葉が自然と受け止められるようになりました。
でもちょっと待って下さい。なにか変ではないでしょうか。
“自分は契約をしてお金を借り、今は必死に返済をしているのに、お金が返ってくる”、というのは、どういうことなんでしょうか。普通はこれでは意味が分からないはずです。
過払金が発生するということが既に認知されているのに、なぜここで敢えて改めて解説をするのかというと、未だにこのようになることを信じられず、すでに返済する必要がなくなっているのに借金を返し続けている人たちがいるからです。
過払いが発生する原理
過払いがなぜ発生することになるのか、これは、俗に言う「グレーゾーン金利」が存在したことによります。
グレーゾーン金利は、18%から29.2%の間の金利をいいます。
正確には、下は18%固定ではなく、借入れの総額により、10万円までは20%、10万円から100万円までが18%、100万円以上は15%となりますが、グレーゾーンを理解するためには本質的問題ではないので、ここでは18%固定でお話をします。
利息制限法という法律があり、お金を貸すときは、18%以上の利息を定めても無効ということになっています。
これに対して、貸金業規制法という法律の43条では、ある一定の条件を満たした場合には、29.2%までの利息を受領することができるとされていました(その後、平成18年末に貸金業法と改正され、平成22年からは、利息制限法以上の利息を取ることは認められなくなりました)。
この貸金業規制法43条の規定に従って、消費者金融やクレジット会社のそのほとんどは、25%以上の利息での貸付を行なっていました。
ところが、平成18年1月、このある一定の条件が満たされているか、が争われた裁判で、最高裁判所は、従来の貸付のほぼ全てがある一定の条件を満たしていないとされる内容の判決を下しました。
ある一定の条件を満たしていなかったわけですから、それまで有効と考えていた18%以上の利息の受領は無効となり、その差額を返還しなければならなくなりました。この差額が過払いであり、その返還を求めることができるわけです。
過払いが認められた背景
一般的には、上記のような説明がなされ、なるほど、それで過払いを返してもらえるんだ、となるわけですが、まじめな人は、それでもまだなんだかしっくりしません。
自分はお金がないときに利息を付けて返済する約束で貸してもらい、まだ返済ができていないのだから、お金を返してもらえるなんてあり得ないだろうと考えてしまいます。
通常であれば、ある意味これがまっとうな考えだと思います。
それではなぜ、まっとうでないことが起こったのでしょうか。それは、以下に述べる時代背景を知らないと、理解できないのです。
我々司法書士は、平成14年より簡裁代理権が認められ、私もそのころから本格的に債務整理の仕事を行なうようになりました。
当時の貸金業を巡る情勢は、次のようでした。
- テレビのゴールデンタイムに消費者金融のコマーシャルが頻繁に流れる
- 駅前などで回りをみると消費者金融の看板があふれている
- 消費者金融大手が日本の企業利益上位に軒並み名を連ねる
- 消費者金融社長は長者番付に名を連ねる
これに対して、消費者金融から借入れをしてしまった債務者は、次のような状況に陥っていました。
- 一度消費者金融からお金を借りると金利が高く返済がなかなかできない
- 借入残高は減るどころかどんどん増えていってしまう
- 借入れを完済できる当てもなく何年も経過する
- 平成16年には破産申立件数が過去最高の約25万件に達した
- 毎年借金を苦にした自殺者が1万人程度いる
両者を比べてみて下さい。なにを救済しなければならないか、明らかではないですか。
<過払い請求> 最終更新 2012-07-11 (水) 21:05:29 by 司法書士下原明(大和市)